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「天才騎手」

暇な時に良くやるのが、意味も無く好きな人の名前でネット検索をする事。
その日も「安藤勝己騎手」で検索していたら「安藤騎手も認めた天才 坂本敏美騎手」という一文が目に入った。

坂本敏美騎手、で調べてみると坂本騎手は名古屋競馬場所属で圧倒的な勝ち星を得てファンからは「神様、仏様、坂本様」と言われていたが昭和60年の落馬事故により大けがを負い引退、今年2月に亡くなられていた。

その坂本騎手についても記載されている「天才騎手」狩野洋一著という本がある事を知った。
この本に描かれている天才騎手とは「福永洋一、坂本敏美、武豊。そして、安藤勝己」。
速攻、Amazonで検索するも残念ながら新書では在庫が無く古本で購入。
(おかげで新書同様のコンディションの本が3分の一程度の価格で購入できたのだけれど。)

主に安藤勝己騎手について書かれているこの本は、あとがきに「本書に登場する人物の大半は実名になっているが、内容はフィクションである事をおことわりしておく。」と明記されてはいるが、おそらくフィクションの形を借りたノンフィクションだろうと推測される。

競馬中継を見る事と安藤騎手は大好きだけれど、競馬については知らない事ばかりで、これを読んだ事で始めて知った事がたくさんあった。

特に地方競馬と中央競馬の格差には驚かされた。
この本の出版された1999年当時、安藤騎手はまだ地方の笠松競馬場所属でその年収は2000万円程度、同じ頃、中央競馬の武豊騎手の年収は1億円と言われていた。
どちらも変わらない勝率を上げているにもかかわらず、地方と中央では大きな収入差があったのだ。
地方の小さな競馬場ではメインのレースに勝っても騎手は5千円しか貰えない場合もあったようだ(今は多少でも改善されているのだろうか?)

その後、安藤騎手は中央競馬の試験を受けて移籍がかない笠松時代に「カラスの鳴かない日はあってもアンカツの勝たない日はない」と言われていたのと同じように今もなお大活躍を続けておられるのだけれど。

同じく地方競馬の坂本騎手はお気の毒だった。
まだ、レース中の事故で怪我をした騎手に対する保証が充分ではなかった時代だったので治療のための費用でそれまでの蓄えをかなり使ってしまい、家族も離ればなれになってしまう。
そんな中でも次に自分と同じように落馬事故などで騎手生活を送れなくなった騎手が出た時にその後の生活の保証が得られるように裁判を起された。
平成4年度から地方競馬の共済制度が改正され騎乗中の事故で障害が残った騎手には上限2500万円が保証される事になった。
保証が認められるようになって、まだ15年くらいしか経っていない事に驚かされる。

そんな不都合や収入差があったものの、大怪我をした坂本騎手がそれでも「悔いの無い人生」と自分の人生を振り返っておられる事に競馬の奥深さを感じる。

安藤勝己騎手も文中で「お金だけで考えたら、この商売はやっていられません。好きだから、馬に乗っているんです」と言われている。

それだから競馬は面白いのだろう。

文中に「馬7分騎手3分」という言葉が何度かでてくる。
馬が良くても騎手が良くても勝てない、だからみんなあんなに熱中するのだ。
馬券の当たり外れがかかわっているにしても、いないにしても。
by uiuilog | 2008-07-06 17:23 | 読書
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