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「猫を抱いて象と泳ぐ」

マスターが亡くなって猫のポーンも姿を消した後、パシフィック・チェス倶楽部の事務局長がリトル・アリョーヒンの家を訪れた時、そこから先を読みたくなくなった。

気紛れなお金持ち連中に人生を搾取される貧しい少年という、ありきたりな展開を想像してしまったからだ。

それが怖くて続きを翌日まで持ち越した。

あまり気が進まないまま再び読み始めて間もなくミイラが実在する少女としてリトル・アリョーヒンの前に現れた。

束の間、ミイラとリトル・アリョーヒンの間でチェスを介してゆるやかな時間が流れるけれど、それも無作法な酔っ払いとゲスな人間チェスによって破壊されてしまう。

思った通り気紛れなお金持ち連中によってリトル・アリョーヒンだけではなくミイラの人生まで搾取されてしまうのだ、と思ったけれど、このころにはもう読むことを止められなくなっていた。

と同時に涙腺が緩くなってきた。

老婆令嬢との最後の一局、マンション・エチュードでの生活。

特にマンション・エチュードに行ってからのリトル・アリョーヒンには追って来る事務局長もいないし心配することは何もない(パシフィック・チェス倶楽部に残ったミイラの事は確かに心配だけれど、ミイラからの手紙も届くようになっていた)のに、フト気付けば鼻の付け根がツンと痛い。

思いがけない結末がリトル・アリョーヒンに訪れるけれど、彼の人生は彼にとって満ち足りた人生だったのだなぁとしみじみ思う。
ただ、ひとつ贅沢を言うなら、せめて最後にミイラに会わせてあげたかったな。

そして、読み終わった後もリトル・アリョーヒンの事を思い浮かべると哀しい訳ではないのにナゼか鼻の付け根がツンと痛むのだ。


久々に「映像化されるなら…」

リトル・アリョーヒン : 斎藤 隆成
マスター : マツコ・デラックス
ミイラ : 福田真由子
おじいさん : 中村吉右衛門
おばあさん : もたいまさこ
成長した弟 : 神木隆之介
事務局長 : 段田安則
老婆令嬢 : 野際洋子
総婦長 : 高畑淳子
(敬称略)
by uiuilog | 2010-08-17 14:05 | 読書
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